「なんでこれができないの?」と叫びたくなった夜に。中堅社員の“基本の学び直し”を進める方法。 

ある営業マネジャーの、深いため息

「古厩さん、正直に言っていいですか」

先日、ある企業の営業マネジャーの方と面談をしていたときのことです。
会議室の空気が、少しだけ重くなった気がしました。

「……疲れてしまったんです」

その言葉を聞いたとき、私は思わず手元の資料から顔を上げました。

彼が話してくれたのは、新入社員のことではありませんでした。
入社5年目——本来なら、チームの中核として頼りにしたい「中堅社員」についてだったんです。


「なんで今さら」という徒労感

「報連相が遅いんです」

「タスクの期限を、平気で過ぎてしまう」

「計画がいつも行き当たりばったりで……」

ひとつひとつは、小さなことかもしれません。
新入社員だったら「まだこれからだよね」と見守れるようなことばかり。

でも、それが中堅社員となると、どうしても感情がざらついてしまうんですよね。

「なんで今さら、こんな基本的なことを言わなきゃいけないんだ」

そんな徒労感。
同時に、「これを指摘したら、彼のプライドを傷つけてしまうんじゃないか」
という優しさゆえの葛藤。

あなたにも、似たような経験があるかもしれません。


なぜ「基本」が抜け落ちてしまったのか

私がこれまでいろんな現場に入らせてもらってきた中で、ひとつ気づいたことがあるんです。

中堅社員の「基本」が身についていない背景には、意外な事情が隠れていることが多いな、と。

ケース①:過去の成功体験が邪魔をしている

若手の頃に、勢いや愛嬌で何とかなってしまった。属人的な頑張りだけで、成果が出てしまった経験がある。
その結果、「計画なんて立てなくても、最後はどうにかなる」という学びが、
知らず知らずのうちに染みついてしまっていることがあるんですよね。

ケース②:誰も、本当の意味で教えてくれなかった

「見て盗め」という文化の中で育った。
あるいは、以前のやさしい上司が全部お膳立てしてくれていた。

「できていない」のではなく、そもそも「正しい型を知らない」まま、年次だけが重なってしまった——。
そんな「迷子の中堅社員」に、私は現場でたびたび出会うんです。


彼ら自身も、実は苦しんでいるのかもしれない

そう考えると、彼ら自身も、実は苦しんでいるのかもしれません。

「周りから期待されているのに、なぜかうまくいかない」 「後輩の手前、今さら聞けない」

そんな焦りが、余計に報連相を遅らせたり、
タスクを抱え込んだりする悪循環を生んでいるようにも思うんです。


「教える」から「一緒に調整する」へ

では、私たちマネジャーや育成担当者は、どうすればいいのでしょうか。

私がおすすめしたいのは、指導のモードを「教える」から「一緒に調整する」に切り替えてみることです。

中堅社員に対して、新人のように「報連相とは何か」を説くのは、お互いにとって少し辛いですよね。
相手は「子ども扱いされた」と感じて心を閉ざしてしまうかもしれないし、
こちらも「当たり前のことを言う」ストレスが溜まっていく。

だからこそ、「一緒に、今の仕事のやり方を点検してみない?」というスタンスをとってみるんです。


相手のプライドを守る言葉がけ

たとえば、こんな言葉がけはいかがでしょうか。

「最近、業務量も増えてきて、以前のやり方だと回らなくなってきてるかもしれないね。お互いのストレスを減らすために、一度『連携のルール』を見直してみようか」

ポイントは、「あなたができていないから直す」ではなく、「状況が変わったから、やり方を変えよう」という提案にすること。

これなら、相手のプライドを守りながら、基本的な行動の変化を促すことができるように思うんです。


精神論ではなく「仕組み」に落とし込む

その上で大切なのは、精神論ではなく「仕組み」の話に落とし込んでいくことだと感じています。

「もっと早めに相談して」——これだと、感覚のズレは埋まらないことが多いんですよね。
彼らにとっての「早め」は、トラブルが起きた後かもしれないからです。

そうではなく、具体的な「型」を一緒に決めてしまう。

  • 「タスクに着手する前に、5分だけすり合わせの時間を作ろうか」
  • 「金曜日の夕方に、来週の計画をチャットで共有するのをルールにしよう」

私はこれを「補助輪の付け直し」と呼んだりしているのですが、
一度型が決まってしまえば、彼らは意外とスムーズに走り出すことが多いんですよ。


名前ひとつで、人は変われる

ある営業マネジャーの方から、こんな話を聞いたことがあります。

部下との定例ミーティングの名前を、「進捗確認会」から「作戦会議」に変えたそうなんです。

監視されている場ではなく、一緒に未来の計画を立てる場にする。たったそれだけで、
部下の方が自分から「来週はここがリスクになりそうなので、先に手を打ちたいです」と相談してくるようになった、と。

名前ひとつ、言い方ひとつで、人は変われる。そんな瞬間を目の当たりにすると、やっぱり人って面白いな、と感じるんですよね。


あなた自身が、背負いすぎないために

最後に、日々現場で戦っているあなたへ。

中堅社員の育成は、本当にエネルギーがいりますよね。「自分がやったほうが早い」——そう思う瞬間も、
一度や二度ではないはずです。

でも、あなたがそこでグッとこらえて、彼らに向き合おうとしていること。
その「忍耐」こそが、組織を強くする一番の栄養分だと、私は思っているんです。

ただ、どうか無理はしないでくださいね。すべてを完璧に育て上げようとしなくていいんです。

  • 「今日は、タスクの期限だけ守れたらOKにしよう」
  • 「まずは、朝の挨拶で顔色を見ることから始めよう」

そんなふうに、ハードルを少しだけ下げてみる。長い目で見てあげること。
それが、結果として彼らの心の緊張を解き、本来の力を発揮するきっかけになるかもしれません。

人が育つには、時間がかかります。
でも、ふとした瞬間に「あ、変わったな」と感じる喜びも、きっとやってきます。

その日が来るのを信じて、今は少しだけ、彼らの隣で伴走してみませんか。

私も、そんなあなたを応援しています。


今日、もし少しだけ時間があれば、気になっているあの中堅社員の方に声をかけてみてください。

「最近、仕事の進め方で困っていることはない?」

仕事の中身ではなく、「プロセス」について聞いてみる。
「できていないこと」を指摘するのではなく、「困りごと」を聞いてみる。

そのスタンスが、凝り固まった関係性をほぐす第一歩になるかもしれません。

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