なぜ1on1は3ヶ月で形骸化するのか?継続する組織が実践している5つの仕組み

あなたの部署で導入した1on1は、今も活発に機能していますか?「部下のモチベーション向上」「コミュニケーション活性化」「離職率改善」といった期待を込めてスタートした1on1が、気がつけば形式的な報告会になっていたり、スケジュール調整すら困難になっていたりしませんか?

多くの組織で1on1が継続しない現実がある一方で、確実に成果を上げ続けている組織も存在します。その違いは一体どこにあるのでしょうか。

目次

1on1が継続しない3つの根本原因

目的の曖昧さが招く「やらされ感」

ある会社では、人事部主導で1on1制度を導入したものの、現場の管理職には「とにかく月1回、部下と面談してください」という指示のみが下りてきました。管理職は「何を話せばいいのか」「どんな成果を求められているのか」が分からず、部下も「なぜ急に面談が始まったのか」と戸惑う状況が続きました。

目的が不明確な1on1は、管理職にとって「こなすべき業務」となり、部下にとっては「時間を取られる面倒な制度」と認識されてしまいます。この状態では、双方にとって価値のない時間となり、自然と優先順位が下がっていくのです。

管理職のスキル不足による「気まずい時間」

1on1は通常の業務指示や進捗確認とは全く異なるコミュニケーションスキルが必要です。しかし、多くの組織では「管理職なら1on1くらいできるだろう」という前提で制度をスタートさせています。

ある会社の営業部長は、1on1で部下に「最近どう?」と聞いても「特に問題ありません」という回答しか得られず、その後気まずい沈黙が続くという体験を重ねました。結果として、1on1の時間が苦痛となり、「緊急の案件が入った」という理由でキャンセルが増えていったのです。

成果が見えないことで生まれる「優先度の低下」

1on1の効果は即座に現れるものではありません。部下のモチベーション向上や組織コミュニケーションの改善は、数ヶ月から半年という時間をかけて徐々に表れてきます。

しかし、日々の業務に追われる現場では「今月の売上目標達成」や「プロジェクトの納期遵守」といった目に見える成果が優先されがちです。ある会社では、四半期末が近づくと1on1が次々とキャンセルされ、「売上が落ち着いたら再開しよう」という状況が続いた結果、制度そのものが有名無実化してしまいました。

継続する組織が必ず押さえている基盤づくり

1on1の目的を組織全体で統一する方法

成功している組織では、1on1導入前に必ず全社説明会を実施し、「なぜ1on1を始めるのか」「どのような成果を期待しているのか」を明確に共有しています。

ある会社では、1on1の目的を「部下の成長支援と組織エンゲージメント向上」と定義し、具体的な成果指標として「部下の自己効力感向上」「上司への信頼度改善」「離職率低下」を設定しました。管理職には「部下の話を聞き、成長を支援する時間」であることを徹底し、部下には「自分の成長について上司と一緒に考える機会」として位置づけを説明しています。

この統一された目的意識により、1on1が「評価のための面談」や「業務進捗の確認会」に変質することを防いでいます。

管理職が自信を持って臨める準備の仕組み

継続する組織では、管理職向けの1on1研修を必ず実施しています。しかし、1回の研修で終わりではなく、継続的なスキル向上の仕組みを構築しているのが特徴です。

ある会社では、月1回の管理職会議で「1on1事例共有会」を実施しています。うまくいった事例だけでなく、困った場面やその解決方法も共有し、全体のスキルレベルを底上げしています。また、人材開発部門が作成した「1on1質問集」や「シーン別対応例」を管理職に提供し、面談前の準備をサポートしています。

さらに、外部の専門コーチによる「1on1ロールプレイ研修」を定期的に実施し、実践的なスキル向上を図っています。

成果を可視化して継続モチベーションを維持する工夫

1on1の効果を可視化するため、成功している組織では定量的・定性的な両面から効果測定を行っています。

ある会社では、四半期ごとに従業員エンゲージメント調査を実施し、「上司とのコミュニケーション満足度」「成長実感」「組織への愛着度」といった指標の変化を追跡しています。同時に、管理職からは「部下の変化」「1on1で得られた気づき」についてのレポートを収集し、成果を組織全体で共有しています。

また、1on1を継続している部署とそうでない部署の離職率比較データを作成し、制度の効果を数値で示すことで、組織全体の継続モチベーションを維持しています。

現場ですぐ実践できる継続のための具体的施策

第1週目から始める「小さな成功体験」の積み重ね方

1on1を成功させるためには、初回から部下に「価値のある時間だった」と感じてもらうことが重要です。

ある会社の営業部長は、1on1の最初の10分を必ず「最近の良い出来事」を聞くことから始めています。仕事に関することでも、プライベートなことでも構わず、部下の良い体験を共有してもらい、それに対して具体的な承認の言葉を伝えています。

「先月の新規開拓、粘り強く提案を続けた結果だね。お客様への理解度が以前より深くなっているのが分かるよ」といった具体的な承認により、部下は「自分を見てくれている」「成長を認めてくれている」という実感を得ることができます。

この小さな成功体験の積み重ねにより、部下は1on1を「価値のある時間」として認識し、自ら積極的に参加するようになります。

月1回の振り返りで質を向上させる実践法

1on1の質を継続的に向上させるため、成功している管理職は定期的な振り返りを実施しています。

ある会社では、管理職が月末に「今月の1on1振り返りシート」を記入することをルール化しています。シートには「部下から引き出せた本音」「部下の成長を感じた瞬間」「次回改善したいポイント」といった項目があり、自分自身の1on1スキルを客観視する機会となっています。

また、四半期に1回、部下に対して「1on1改善アンケート」を実施し、「話しやすい雰囲気だったか」「有意義な時間だったか」「改善してほしい点はあるか」といった率直なフィードバックを収集しています。

このPDCAサイクルにより、1on1の質は着実に向上し、部下の満足度も継続的に高まっています。

部下から「次回も楽しみ」と言われる1on1の進め方

継続する1on1では、部下が主役となって話せる環境づくりが不可欠です。

ある会社の人材開発部長は、1on1で「最近チャレンジしていることはある?」「どんなスキルを伸ばしたいと思っている?」といった未来志向の質問を中心に構成しています。過去の失敗や問題点を追及するのではなく、部下の成長意欲や将来への想いを引き出すことに集中しています。

さらに、1on1の最後には必ず「今日話してみてどうだった?」「次回までに一緒に考えたいことはある?」と部下に確認し、次回への期待感を醸成しています。

部下が「自分の成長について真剣に考えてくれる上司」「自分の話をしっかり聞いてくれる人」として上司を認識することで、1on1は部下にとって貴重な成長機会となり、継続への強いモチベーションが生まれます。

まとめ:継続する1on1で組織力を確実に向上させる

1on1が継続しない根本原因は、目的の曖昧さ、スキル不足、成果の不可視化にあります。しかし、これらの課題は適切な仕組みづくりと継続的な改善により確実に解決できます。

成功の鍵は、組織全体での目的統一、管理職のスキル向上支援、効果の可視化という基盤づくりにあります。そして、現場では小さな成功体験の積み重ね、定期的な振り返り、部下中心の進め方という具体的な実践により、1on1を価値ある時間として定着させることができます。

まずは来週から、あなたの部署で「1on1の目的を部下と共有する」「部下の良い出来事を聞く時間を作る」「月末に振り返りシートを記入する」という3つのステップから始めてみてください。継続する1on1は、必ずあなたの組織力向上の強力な武器となるはずです。

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