1. はじめに:あなたの質問は部下の可能性を広げていますか?
「部下の主体性を育てるには、問いかけが大事だ」
リーダーシップ研修ではよく聞くこのフレーズ。
しかし、「問いかけているつもり」が実は部下の主体性を奪っていることをご存知でしょうか?
考えてみてください。こんな会話、よくありませんか?
上司:「このやり方のほうが効率的だと思わない?」
部下:「そうですね…」(上司がそう言うなら、そうするしかないか)
上司としては「考えるきっかけを与えている」つもりでも、部下からすると「上司の意図を読み取る」ゲームになってしまいます。
この記事では、部下の主体性を奪ってしまう「質問型アドバイス」の落とし穴と、真の主体性を引き出す問いかけのテクニックをご紹介します。
あなたの問いかけは、部下の思考を制限していませんか?それとも可能性を広げていますか?
2. 部下の主体性を奪う”質問型アドバイス”の正体
「質問しているのに、なぜか部下が受け身になる…」
もしそう感じているなら、あなたは知らず知らずのうちに「質問型アドバイス」を使っているかもしれません。
質問型アドバイスの典型例
次のような問いかけに心当たりはありませんか?
- 「このやり方のほうがいいと思わない?」
- 「こうしたほうが効率的じゃない?」
- 「この資料、もっとシンプルにしたほうが伝わるんじゃない?」
これらは質問の形をしていますが、実質的には「こうすべきだ」というアドバイスです。部下は「質問に答える」よりも「上司の期待に応える」ことに意識を向けてしまいます。
上司の意図と部下の受け取り方のギャップ
こうした質問をする上司の本来の意図は:
- ✅ 考えるきっかけを与えたい
- ✅ 答えを押しつけず、自発的に気づいてほしい
- ✅ 遠回しに指導し、納得感を持ってほしい
しかし、部下の受け止め方はこうなりがちです:
- ❌ 「上司の望む答えを探さなきゃ…」
- ❌ 「これって質問というより指示だよな…」
- ❌ 「結局このやり方でやれってことか…」
主体性が奪われるメカニズム
「このやり方のほうがいいと思わない?」と聞かれた部下の心理は:
- 「上司がそう言うなら、そうなんだろう」
- 「別の考えを言ったら否定されるかも…」
- 「無難に”そうですね”と言っておこう」
こうして部下は「自分で考えなくても、上司が答えをくれる」と学習し、徐々に主体性を失っていきます。これが「部下のため」という善意が逆効果になる仕組みです。
3. 質問型アドバイスが逆効果になる3つの理由
1. 「自分で決めた」と思えないとやる気は出ない
心理学の「自己決定理論」によれば、人は「自分で選んだ」と思えるときにやる気が高まります。逆に「やらされている」と感じるとモチベーションは低下します。
「このシステムのほうがいいと思わない?」と質問されたとき、部下は表面的には同意しても、「結局決まっていることを承認しただけ」と感じてしまいます。
2. 「正解探し」になり、創造的思考が止まる
質問型アドバイスを受けた部下は、「上司の求める正解は何か?」を考えるようになります。これでは自分の考えを巡らせることよりも、上司の意図を読み取ることに意識が向いてしまいます。
3. 上司の意図を読むことに意識が向き、判断力が弱まる
部下の頭の中はこうなります:
- 「上司はどういう答えを求めているんだろう?」
- 「ここで違う意見を言ったら、否定されるかな?」
- 「無難に”Yes”と言っておいたほうがいいかも…」
これが繰り返されると、部下は「本当にどうすべきか」ではなく「上司の期待に応えるには」という思考回路で動くようになります。
質問型アドバイスの本質は「問いかけ」ではなく「コントロール」になっているのです。
4. 部下の主体性を育む”本当の問いかけ”のポイント
1. 考える余地を与える質問をする
❌ NG例:質問型アドバイス
「このやり方のほうがいいと思わない?」
(実質的には「このやり方にしろ」という指示)
「もっとシンプルにしたほうが伝わるんじゃない?」
(すでに上司の意見が含まれている)
✅ OK例:主体性を育む問いかけ
「この業務を進める上で、どんな方法が考えられる?」
(部下自身が選択肢を考える機会を持てる)
「今の提案資料について、自分で改善できるとしたらどこを直す?」
(部下の視点での気づきを促す)
ポイントは「考える余白をつくる」ことです。選択肢を制限せず、自由に発想させることで思考力が鍛えられます。
2. 「どう思う?」ではなく「どうしたい?」を聞く
「君はどう思う?」という質問には落とし穴があります。
部下は「意見を言ったら否定されるかも」と萎縮しがちです。
代わりに「どうしたい?」と聞くことで、部下に決定権があることを示しましょう:
「このプロジェクト、次にどんなアクションを取りたい?」
「この問題を解決するために、どんな方法を試したい?」
「どうしたい?」と問われることで、部下は「自分が決めるべきだ」という責任感を持ち、
主体的に動くようになります。
3. 沈黙を怖がらず、考える時間を与える
問いかけた後、部下がすぐに答えないことがあります。
多くの上司は沈黙が気まずく感じ、つい追加で話してしまいます:
NG例:「どうしたい? …やっぱり、この方法がいいと思わない?」
(せっかくの問いかけを台無しにしてしまう!)
沈黙は、部下が真剣に考えている証拠です。
すぐに答えが出なくても、最低5秒は待つ習慣をつけましょう。
待つことで「自分で考える文化」が生まれます。
4. 部下の意見を受け止め、視野を広げるフィードバックをする
部下の意見が不完全でも、まずは受け止めることが大切です:
NG例:「それは違うと思うよ。こうしたほうがいいんじゃない?」
(上司の答えを押しつけてしまう)
OK例:「なるほど、そう考えたんだね。他にはどんな方法があると思う?」
(部下の意見を尊重しながら、思考の幅を広げる)
部下の考えを尊重しつつ、新たな視点を投げかけることで、より深く考える力が育ちます。
5. 実践編:明日から使える”主体性を育てる質問”テクニック
1. 指示を出す前に「自分で考えさせる」質問
部下:「この仕事、どう進めればいいですか?」
上司(NG):「まずAをやって、その後Bをして…」
上司(OK):「君はどう進めようと考えている?」
「まず自分で考える」習慣をつけることで、指示待ちを防げます。上司が先に答えを言わないことで、部下は「自分で考える責任」を持つようになります。
2. アイデアや提案を引き出す質問
部下:「この施策についてどう思いますか?」
上司(NG):「うーん、ここが微妙だからこう直してみたら?」
上司(OK):「君自身はどう感じている?」
「どうしたい?」と聞くことで、部下の考えを尊重できます。最初に上司の意見を言うと、部下は「それが正解」と思い、思考が止まってしまいます。
3. 失敗やトラブル時に成長を促す質問
部下:「すみません、ミスをしてしまいました…」
上司(NG):「なんでこんなミスをしたの?」(責める口調)
上司(OK):「次に同じことが起きないようにするには、どうすればいい?」
「解決策を考えさせる」質問で、ミスを成長の機会に変えられます。原因追及よりも未来志向の問いかけが、前向きな思考を促します。
4. 優柔不断な部下に決断を促す質問
部下:「どちらの選択肢がいいと思いますか?」
上司(NG):「うーん、Aのほうがいいかもね」
上司(OK):「君はどちらが良いと思う?理由は?」
「まず自分で答えを出す」習慣をつけることで、決断力が鍛えられます。特に「上司の判断を待つ」タイプの部下に効果的です。
5. 部下の成長を加速させる振り返りの質問
部下:「今日のプレゼン、どうでしたか?」
上司(NG):「良かったよ。でも、もう少しロジカルに話すといいね」
上司(OK):「君はどの点が良かったと思う?どこを改善できそう?」
「自己評価」を促すことで、主体的に学ぶ力がつきます。フィードバックをすぐに与えるのではなく、部下自身に気づかせることで、より深い学びにつながります。
6. 最後に:上司の「問い方」が部下の未来を決める
あなたの質問はどちらになっているか?
❌ 主体性を奪う質問型アドバイス | ✅ 主体性を育む本当の問いかけ |
---|---|
「このやり方のほうがいいと思わない?」 | 「どう進めるのがベストだと思う?」 |
「こうしたほうがいいんじゃない?」 | 「改善するなら、どこをどう変える?」 |
「AとB、どっちがいいと思う?」(正解探し) | 「君ならどんな選択肢を考える?」 |
「なんでそんなミスをしたの?」 | 「次に同じことを防ぐには?」 |
違いは「考える余地があるかどうか」です。
今日から実践できる3つのアクション
- ✅ すぐに答えを教えず、まず部下に考えさせる
- ✅ 「どう思う?」ではなく「どうしたい?」と聞く
- ✅ 沈黙を恐れず、じっくり待つ
これらを意識するだけで、部下の反応が変わり、少しずつ主体的に動くようになっていきます。
「自ら考え、行動する組織」をつくるために
部下の成長は、上司の関わり方次第です。質問型アドバイスをやめ、本当の意味での「問いかけ」を実践することが、組織の力を高める第一歩になります。
あなたの「問い方」が、部下の未来を決める——
明日からの会話の中で、ぜひ実践してみてください!