こんにちは!KSFコンサルティングの古厩です。
今日は私が15年間の営業経験で磨いてきた、
商談を劇的に改善するシンプルなテクニック 「見せるメモ」についてお伝えします。
「見せるメモ」との出会い
私がこのテクニックに出会ったのは、
研修会社に転職した際に、上司の営業に同行させてもらったときです。
その日、私たちはその日アポイントが取れた企業の人材開発部長との初回商談に臨んでいました。
会議室に入ると、部長は時間がないと言わんばかりの素っ気ない態度。
話が進まず、空気は徐々に重くなっていきました。
そのとき、
上司が取り出したのは何の変哲もないA4の白紙と太字の万年筆。
「御社の課題を整理させてください」
そう言いながら、
部長の言葉をシンプルな図と箇条書きでメモし始めたのです。
最初は無反応だった部長が、徐々にメモに興味を示し始め、
「そうそう、あとこの問題もある」と自ら話し始めました。
30分後には、当初10分で切り上げようとしていた部長が
「もう少し話そうか」と姿勢を変え、予定時間をオーバーして熱心に議論する展開に。
この経験から、「見せるメモ」の威力に目覚めた私は、
以来このテクニックを磨き続けてきました。
「見せるメモ」とは何か
「見せるメモ」とは、商談中にリアルタイムで手書きのメモを取りながら、
それを相手に見せることで会話を活性化させるテクニックです。
通常、メモは自分のために取るものですが、
「見せるメモ」は相手と共有することを前提としています。
話しながら図解やキーワードをメモして見せるだけのシンプルな行為ですが、
商談の流れを大きく変える効果があります。
なぜ効果的なのか?その科学的背景
「見せるメモ」が効果を発揮する理由は、実は脳科学的にも説明できます。
1. デュアルコーディング効果
人間の脳は、言語情報(聴覚)と視覚情報を別々の経路で処理しますが、
両方の経路を同時に活用すると理解度と記憶の定着率が飛躍的に高まります。
これを「デュアルコーディング理論」と言います。
営業担当の松下さん(仮名)の事例:
「複雑なシステム導入の提案で悩んでいました。何度説明しても『検討します』の一言で終わる状態が続いていました。そこで『見せるメモ』を導入。お客様の業務フローを図解しながら問題点を可視化したところ、『そうそう、ここが一番の問題なんだよね』と本音が出始め、2ヶ月越しの案件がその場で決裁されました」
2. 共有注意メカニズム
同じものを見ながら会話することで「共有注意」という心理状態が生まれます。
これは赤ちゃんと親の関係でも重要視される、信頼関係構築の基礎となるメカニズムです。
不動産営業の佐藤さん(仮名)の事例:
「マンション購入を検討されているお客様との商談で、希望条件がどんどん変わり、話がまとまりませんでした。そこで白紙に『絶対条件』『できれば条件』『譲れる条件』の3つの円を描き、お客様と一緒に条件を整理していきました。視覚的に優先順位が明確になったことで、お客様自身が『本当に必要なのはこれだけだな』と気づき、スムーズに物件を絞り込むことができました」
3. 外部記憶装置としての機能
複雑な内容を頭の中だけで処理するのは認知的負荷が高すぎます。
メモを外部記憶装置として活用することで、思考リソースを会話自体に集中できるようになります。
医療機器メーカー営業の高橋さん(仮名)の事例:
「病院の先生は多忙で、短時間で複雑な機器の説明をしなければなりません。カタログを見せても『後で読む』と言われるだけ。そこで先生の前でA4用紙に機器の核となる3つのメリットだけをシンプルに図解。『これなら理解できる』と言われ、詳しい説明を聞いてもらえるようになりました。今では商談の際には必ず白紙を用意しています」
「見せるメモ」の実践テクニック
では、具体的にどのように「見せるメモ」を活用すればよいのでしょうか。
代表的な3つの使い方と、実際の事例を紹介します。
1. 問題構造化メモ:お客様の課題をヒアリングしながら、図で整理する
これは最も基本的な使い方です。お客様の話を聞きながら、課題の構造を視覚化していきます。
実践例:IT企業営業のケース
マーケティング部門向けのSaaS製品を提案していた井上さん(仮名)は、なかなか相手の本当の課題が見えてきませんでした。そこで、次のようなステップで「見せるメモ」を活用しました。
- A4用紙の中央に「現状」と「理想」の2つの四角を描き、間に距離を示す点線を引く
- 相手の言葉を拾いながら、「現状」ボックスに課題を書き込んでいく
- 「データ分析に時間がかかる」
- 「部門間でデータが共有できていない」
- 「レポート作成が手作業で非効率」
- 「理想」ボックスには目指したい状態を書き込む
- 「分析時間を1/3に短縮」
- 「リアルタイムでデータ共有」
- 「自動レポート生成」
- 書き終えたら「こういう理解で合っていますか?」と確認
このシンプルな図解によって、相手は自分の課題が整理されて見えるようになりました。
さらに井上さんは、
「この3つの課題の中で、特にどれが優先度が高いですか?」
と質問。すると相手は「データ共有」と即答し、
さらに「実は社長から部門間連携強化の指示があって…」と本音が出始めました。
ここで初めて、表面的な業務効率化ではなく「部門間連携」が真の課題だと判明したのです。
井上さんはその場で提案内容を修正し、
部門間連携機能を前面に出した提案書を再作成。2週間後に契約が決まりました。
2. 提案マッピングメモ:自社の提案内容をポイントごとに書き出し、共有しながら話す
これは提案内容を整理して伝えるときに有効なテクニックです。
実践例:人材サービス営業のケース
採用支援サービスを提案していた山田さん(仮名)は、複数の競合との比較で苦戦していました。
プレゼン資料を作り込んでも「検討します」の一言で終わる商談が続いていました。
そこで最後の商談で、次のような「見せるメモ」を試みました。
- A4用紙の中央に「採用課題」と書き、周囲に放射状に主要な課題を配置
- 「応募者数の減少」
- 「選考の長期化」
- 「内定辞退の増加」
- 「採用コスト増」
- 各課題に対して、自社サービスの解決策を簡潔に書き込む
- 「特化型媒体でのターゲティング強化→応募数30%増」
- 「選考一元管理システム→選考期間2週間短縮」
- 「内定者フォローアップ→辞退率15%減」
- 競合との差別化ポイントを色ペンで強調
この「マップ」を見せながら説明すると、
人事部長が「この『選考一元管理』についてもう少し詳しく聞きたい」と関心を示しました。
実はここが自社の最大の強みだったのです。
山田さんはその場で選考管理システムの詳細を別紙に図解。
結果的に「他社より高いけど、この機能は魅力的だ」と評価され、競合を抑えて受注に成功しました。
山田さんは後日、「プレゼン資料だけでは伝わらなかった『強み』が、
手書きのメモだと相手の関心を引きやすかった」と振り返っています。
3. 共感確認メモ:相手の言葉をその場でメモし、「こういうことですか?」と確認する
これはお客様との信頼関係を築くのに特に効果的なテクニックです。
実践例:金融商品営業のケース
資産運用相談を担当していた鈴木さん(仮名)は、50代の経営者との商談で壁にぶつかっていました。
相手は「あまり興味がない」という態度で、具体的な資産状況も教えてくれません。
そこで鈴木さんは、相手の何気ない発言を丁寧にメモする方法を試しました。
- 「老後が少し心配」という発言を聞いて、紙の中央に「老後の不安」と書く
- さらに聞き出した具体的な懸念事項を周囲に書き足していく
- 「事業承継をどうするか」
- 「子どもの教育資金」
- 「自分の医療費増加」
- 「こういったご心配があるということですね」と確認しながら進める
このメモを見た経営者は、「そうそう、特に事業承継が一番の悩みなんだ」と急に話し始めました。
実は息子への事業承継を考えており、その準備のための資産管理が本当の相談事だったのです。
鈴木さんはその場で事業承継に特化した資産管理プランを別紙に図解。
結果的に5000万円の運用契約につながりました。
鈴木さんは「相手の言葉を書き留めることで『ちゃんと聞いてもらえている』という
安心感を与えられたのが大きかった」と分析しています。
「見せるメモ」実践のための7つのコツ
実際に「見せるメモ」を取り入れる際の具体的なコツをご紹介します。
1. シンプルさを心がける
凝った絵や複雑な図解は逆効果です。基本的な図形(四角、丸、矢印など)と単語だけでOK。
美しさよりも分かりやすさを優先しましょう。
実践例: IT機器営業の中村さん(仮名)は当初、緻密な図解を心がけていましたが、
かえって相手が混乱する場面がありました。
そこで「四角」「丸」「矢印」の3つの要素だけで図解するルールを設定。
シンプルになったことで、かえって相手の理解が深まりました。
2. 余白を残す
情報を詰め込みすぎず、新しいアイデアや意見を追加できるスペースを確保します。
全体の60%程度の使用率を目安にしましょう。
実践例: 製造業向け営業の木村さん(仮名)は、A4用紙を4つのエリアに区切り、
あえて1つは白紙のままにする方法を実践。
「この部分はお客様からのアイデアで埋めていきましょう」と伝えることで、
相手が主体的に意見を出すようになりました。
3. キーワードを使う
長文ではなく、インパクトのある単語や短いフレーズを使います。
相手の言葉をそのまま使うと、より共感を得られます。
実践例: 人材コンサルタントの田村さん(仮名)は、
クライアントが使った「社員が燃え尽きている」というフレーズをそのままメモに大きく書き、
中心に置きました。
このキーワードを起点に問題の構造を可視化したところ、「まさにこれが問題の本質だ」と
クライアントから共感を得られました。
4. 色は3色程度に抑える
色の使いすぎは情報整理を難しくします。
基本は黒for主要情報、青for補足情報、赤for重要ポイントの3色が効果的です。
実践例: 保険営業の斎藤さん(仮名)は、保険プランの説明で「基本保障(黒)」「オプション(青)」「特に重要な点(赤)」の3色だけを使い分ける方法を確立。
色の意味が一貫しているため、お客様が情報を整理しやすくなりました。
5. 質問しながらメモする
一方的に書くのではなく、「これでよろしいですか?」「他にありますか?」と確認しながら進めます。
相手を巻き込むことがポイントです。
実践例: 広告営業の小林さん(仮名)は、クライアントのターゲット層を図解する際、
「この層以外にもターゲットはありますか?」と質問しながらメモを作成。
すると当初言及のなかった「シニア層」という新たなターゲットが出てきて、提案の幅が広がりました。
6. ツールは状況に応じて選ぶ
対面ならA4用紙やホワイトボード、オンライン商談ならタブレットやデジタルホワイトボードアプリなど、
状況に応じて最適なツールを選びましょう。
選択のポイントは相手から見える大きさで書けるツールかどうかです。
実践例: SaaS営業の藤田さん(仮名)は、コロナ禍でのオンライン商談増加に伴い、
iPad+Apple Pencilを活用。Zoom画面共有で手書きメモを見せながら商談を進める方法を確立し、
対面と変わらない成約率を維持することができました。
7. 商談後のフォローに活用する
その場で撮影して送付したり、清書して提案書の補足資料にしたりと、
メモを商談後のコミュニケーション継続に活用します。
実践例: 建設資材営業の吉田さん(仮名)は、商談中に作成したメモをスマホで撮影し、その場でメールに添付して送信。「今日の話し合いの整理として送らせていただきました」というメッセージと共に送ることで、翌日には「あの図を見ながら社内で説明したところ、上司の承認が得られました」という返信がありました。
「見せるメモ」導入の失敗例と対策
もちろん、すべての商談で効果があるわけではありません。代表的な失敗パターンと対策をご紹介します。
失敗例1:相手の話を聞かずに図解に集中してしまう
メモ取りに集中するあまり、相手の表情や反応を見逃してしまうケースです。
対策: メモを取る時間と相手を見る時間を意識的に分けましょう。「少しメモを取らせてください」と一言断ってから書き始め、書き終えたら必ず顔を上げて「こんな理解でよろしいですか?」と確認します。
失敗例2:自分の「解釈」を押し付けてしまう
相手の言葉を自分なりに解釈しすぎて、「それは違う」と指摘されるケースです。
対策: まずは相手の言葉をそのまま書き、解釈を加える場合は「こういう理解でよろしいですか?」と必ず確認します。間違っていても「ありがとうございます、修正します」と素直に受け入れましょう。
失敗例3:相手がメモに無関心な場合
中には視覚情報より口頭での説明を好む人もいます。
対策: 最初の反応で相手の好みを見極めることが大切です。メモに反応がない場合は、無理に続けず、口頭中心のコミュニケーションに切り替えましょう。
様々な業種での「見せるメモ」活用事例
「見せるメモ」は業種を問わず活用できます。いくつかの業種別活用事例をご紹介します。
金融・保険業界
複雑な商品内容や将来シミュレーションを可視化することで理解を促進できます。
成功事例: 生命保険営業のAさんは、保障内容を説明する際に「ライフイベント表」を手書きで作成。結婚、出産、子どもの進学、退職などのライフイベントを横軸に、必要保障額の変化を折れ線グラフで表現。時間経過による保障ニーズの変化が視覚的に理解できることで、長期的な保険設計への納得感が高まりました。
IT・システム業界
技術的な内容を非IT担当者にも分かりやすく伝えるのに効果的です。
成功事例: システム営業のBさんは、システム導入の流れを「山登り」に例えた図解を活用。現状分析を「ベースキャンプ」、要件定義を「登山準備」、開発を「登山」、運用を「山頂での活動」と例えて図示。IT知識の少ない経営層に対しても、プロジェクトの全体像と各フェーズの重要性を直感的に伝えることができました。
製造業・建設業界
製品の特徴や工程を視覚化することで、技術的な優位性を伝えやすくなります。
成功事例: 建材メーカー営業のCさんは、自社製品と競合製品の違いを説明する際、製品断面図を手書きで描きながら構造の違いを説明。カタログの写真だけでは伝わらない技術的優位性が理解され、採用に繋がりました。
不動産・住宅業界
間取りや立地条件を図示することで、イメージの共有がしやすくなります。
成功事例: 不動産営業のDさんは、物件探しに悩むお客様に対し、希望条件を「譲れない条件」と「できれば条件」に分けて図示。優先順位が明確になったことで、候補物件を効率的に絞り込むことができました。
人材・教育業界
キャリアプランや教育計画を視覚化することで、長期的な視点を持ってもらいやすくなります。
成功事例: 人材育成コンサルタントのEさんは、研修プログラムの提案時に「スキル成長マップ」を手書きで作成。現在のスキルレベルと目標到達点を明示し、その間のステップを可視化。抽象的になりがちな「人材育成」の具体的なイメージを共有することができました。
まとめ:明日から使える「見せるメモ」の始め方
「見せるメモ」は特別なスキルや才能がなくても、明日から誰でも始められるテクニックです。
Step 1: 最小限の準備から始める
- A4の白紙(罫線なし)を5枚
- 黒・青・赤の3色ペン(できるだけ太いペンを使用する)
- クリップボードがあれば便利
Step 2: 簡単なものから試す
最初の商談では、相手の課題を3つだけ書き出して整理する程度から始めましょう。
Step 3: 振り返りと改善
商談後に「どんな図解が効果的だったか」「相手の反応はどうだったか」を振り返り、次回に活かします。
Step 4: レパートリーを増やす
基本的な図解パターン(比較表、フロー図、マインドマップなど)を少しずつ増やしていきましょう。
「見せるメモ」の最大の魅力は、商談が一方通行のプレゼンではなく、お客様と 「一緒に考えている」 感覚を作れること。これにより信頼関係が深まり、単なる「売り手と買い手」を超えた関係構築ができるのです。
ぜひ次の商談で試してみてください!