「複数案ください」にそのまま応えていませんか?

「複数案をいただけますか?」

この一言で、多くの営業担当者はつい“とりあえず作る”に走ってしまいます。
しかし、この行動こそが、営業組織の生産性や提案の質を下げる大きな要因です。

営業が顧客の評価軸を聴き取らずに複数案を作ると、案の数は増えるものの、
選ばれる可能性はむしろ低くなります。顧客は案の数よりも、案を比較するための軸を求めているのです。

今回は、BtoB営業を担当する部門長やマネージャー向けに、


「複数案依頼を受けたときに、営業がヒアリングスキルを使って顧客の比較軸を引き出し、選ばれる提案に仕上げる方法」

を解説します。
実務ですぐに使える会話例も紹介するので、今日から現場で活用できます。

動画でも解説しているので、是非御確認ください。


目次

複数案依頼に即応する営業が陥る落とし穴

顧客から複数案の依頼を受けたとき、多くの営業は案を作ることに意識が向きます。
しかし、この即応行動は、いくつかの落とし穴を孕んでいます。

まず、顧客は案の「数」を求めていないことが多いという点です。
顧客自身も比較軸が整理できていない場合がほとんどで、
「とりあえず複数案を出してほしい」という依頼は思考の整理不足の表れです。
案の数を増やすこと自体は、顧客にとって価値があるわけではありません。

次に、複数案作成は営業担当者の工数を圧迫します。
案を増やせば増やすほど、顧客の背景や意思決定プロセスを理解する時間は削られ、
提案書の精度は下がります。作業に追われることで、ヒアリングスキルや提案力の本質が薄まるのです。

さらに危険なのは、「複数案を作る営業が評価される」という文化が組織に定着してしまうことです。
こうなると営業は顧客に振り回され、提案の質よりも作業量が優先されてしまいます。
BtoB営業において最も重要なのは、顧客の課題に沿った“選ばれる提案”を作ることです。
案の数で勝負することではありません。


ある会社では…失注の原因は「観点の聞き漏れ」だった

ある会社では、複数案を提出しても失注が続くケースがありました。
顧客から「いくつかパターンを見せてほしい」と言われ、
営業は複数の案を作成したものの、どれも採用されませんでした。

原因を調べると、問題は案の内容ではなく、顧客の評価軸を十分に聞き出せていなかったことにありました。
顧客社内には、コスト重視の担当者、運用負荷を懸念する担当者、将来の拡張性を重視する担当者など、
立場ごとに優先度が異なる人物が存在しました。

しかし、営業はその観点を聴かないまま提案を作ってしまったのです。

結果として、顧客は「どの案も悪くないけれど、自分たちの判断軸に合わない」と感じ、
案はすべて選ばれませんでした。ヒアリングの漏れが失注につながった典型例です。

その後、同社では「複数案を作る前に、必ず比較の軸を確認する」というルールを導入しました。
この小さな変化だけで、営業の提案精度は格段に向上し、工数も削減されました。顧客の評価軸を引き出すことが、
選ばれる提案を作るための最初のステップであることを示す事例です。


顧客は案ではなく“比較の軸”を欲しがっている

複数案を求める顧客の本音は、案の数が欲しいことではありません。

顧客が求めているのは、案を比較するための軸です。

営業現場ではよく、「とりあえずいくつか案を見せれば選んでもらえるだろう」と考えがちですが、この考えは誤りです。

顧客は、自分たちの意思決定を支える“判断の拠り所”を求めています。
例えば、初期コスト重視か、運用負荷軽減重視か、拡張性重視か、
といった比較軸です。

この軸を営業側が引き出せなければ、案をいくつ出しても刺さりません。
逆に、比較軸が明確であれば、1つの提案でも顧客は納得しやすくなり、
意思決定もスムーズに進みます。複数案依頼の背景には、顧客内部での意思決定のバラツキや、
評価基準の不明確さがあります。営業はその背景を整理する役割を持つのです。


顧客の“評価軸”を引き出す実践シーン別ヒアリング例

ここでは、営業が現場で使える実践的な会話例を紹介します。
すべて、BtoB営業でのヒアリングスキル向上に直結する内容です。

●シーン1:複数案依頼を受けた瞬間

顧客:「比較のために、いくつか案をいただけますか?」
営業:「もちろんです。その前に、比較の際に特に重視される観点を教えていただけますか?」

この問いかけにより、顧客は自分たちの意思決定基準を整理し始めます。
案を出す前に比較軸を確認することで、営業提案の精度は大きく向上します。


●シーン2:顧客が曖昧に要件を伝える場合

営業:「今回の検討で、最も優先される課題はどれでしょうか?」
顧客:「うーん、全部重要ですが…」
営業:「過去のプロジェクトでは、どの観点が決定的だったか教えていただけますか?」

曖昧な要件の背後には優先度があります。
ヒアリングでその優先度を明確にすることが、選ばれる提案作成につながります。


●シーン3:決裁者が別にいる場合

営業:「最終決裁者の方は、どの観点を重視される方ですか?」
顧客:「コストとスピードを重視する方です」

意思決定者の軸を把握することで、提案の比較軸もより現実的になります。
評価軸を共有しておくと、複数案を作る必要も最小限で済みます。


●シーン4:顧客の悩みが顕在化していない場合

営業:「現状で困っていることはどこですか?」
顧客:「運用の負荷が大きくて、業務が回らないことです」
営業:「その課題が解消されると、どんな成果を期待されますか?」

課題の背景を聞き出すことで、顧客の評価軸は自然に明確化されます。


最適案に絞り込み選ばれる提案にする技術

評価軸が明確になれば、案の数ではなく質で勝負できます。

  1. 比較軸を提案書冒頭に明示する
    顧客は最初に比較軸を確認することで、提案を自分ごととして理解します。
  2. 案ごとのメリット・デメリットを軸に沿って整理する
    複数案が必要な場合でも、比較軸に沿って整理することで顧客の判断を助けます。
  3. 営業側の推奨案を明確に提示する
    案を並べるだけでは選ばれません。推奨理由を論理的に説明することで意思決定が早まります。
  4. 顧客に選択の背景を言語化してもらう
    「どの軸を最優先しますか?」と問いかけるだけで、顧客は意思決定の拠り所を確認でき、案の採用が進みます。

まとめ:明日から“複数案の前に聴く”文化をつくる

複数案を作る前に顧客の評価軸を聴くことは、営業組織の文化として定着させる価値があります。

これを徹底すれば、提案の質は上がり、工数は削減され、顧客との信頼関係も強化されます。

今日から実践できるステップはシンプルです。

  • 複数案を求められたら、まず「比較軸」を確認する
  • 要件が曖昧なら「優先度」と「背景」をヒアリングする
  • 意思決定者の観点を把握する
  • 提案書には必ず比較軸を明示する

これらを組織で徹底することで、営業は“案の数”から解放され、顧客の意思決定を支援する本質的な役割に集中できます。

選ばれる提案を作る営業文化は、今日の一言ヒアリングから始まります。

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