研修が終わった後、受講者が「この研修を受けて良かった」と感じ、
企業の担当者が「実施して正解だった」と思える。
これが研修に関わるすべての人が目指すべきゴールだと思っています。
では、このゴールを実現するために、研修会社と講師はそれぞれ何をする必要があるのか。
今回はこの点について考えてみたいと思います。
受講者にとって「良い研修」とは何か
まず、受講者の立場で考えてみます。
受講者が「受けて良かった」と感じるのは、どんなときでしょうか。
それは、自分の日常に引き寄せて考えられたときです。
「うちの部署でもまさにこういうことが起きている」
「明日からこうやってみよう」。
研修中にこうした実感が湧く瞬間があると、受講者の表情が変わります。
ただ知識をインプットするだけの時間ではなく、自分の仕事に直結する「気づき」を得られた実感。
これこそが、受講者にとっての「良い研修」です。
逆に、どれだけ講師のプレゼンテーションが上手くても、
内容が自分たちの現場と噛み合っていなければ、
受講者は「いい話だったけど、うちには関係ないかな」で終わってしまいます。
企業が「実施して良かった」と感じるとき
企業の担当者の視点はどうでしょうか。
研修を企画する担当者は、研修の実施を社内に提案し、
予算を確保し、受講者のスケジュールを調整しています。
つまり、社内に対して「研修の成果」を説明する責任を負っています。
だからこそ、担当者が求めているのは「研修を実施した」という事実ではなく、
「研修をきっかけに組織がこう変わった」と語れるストーリーです。
受講者が研修後に行動を変え、チームの雰囲気が変わり、成果につながっていく。
そうした変化を実感できたとき、担当者は「この研修を選んで正解だった。
来年もぜひお願いしたい」と感じるのです。
「良い研修」は当日だけでは生まれない
ここで重要なのは、受講者の「受けて良かった」も、企業の「実施して良かった」も、
研修当日の講師の力だけでは生まれない
ということです。
どれだけ優秀な講師であっても、顧客の課題や受講者の状況を知らなければ、
現場に響くプログラムは設計できません。
研修の成果は、当日のずっと前、企画・設計の段階で大部分が決まります。
つまり、「この研修を受けて良かった」を生み出すためには、
研修当日に至るまでのプロセス全体を、
研修会社と講師が一緒に丁寧に積み上げていく必要があるのです。
研修会社の役割 ~顧客の「本当の声」を届ける~
研修会社が担う最も重要な役割は、顧客の「本当の声」を講師に届けることです。
企業の担当者は、研修を通じて解決したい課題を抱えています。
しかし、その課題は必ずしも明確に言語化されているとは限りません。
「コミュニケーション研修をやりたい」という依頼の背後には、
「部門間の連携がうまくいっていない」
「若手が上司に意見を言えない」
「マネージャーが現場の声を拾えていない」
など、様々な課題が隠れている可能性があります。
研修会社のプロとしての力量は、
こうした背景を丁寧に引き出し、整理し、講師に伝えるところに現れます。
「なぜ今この研修が必要なのか」
「受講者は普段どんな仕事をしているのか」
「研修後にどんな状態になっていてほしいのか」。
こうした情報を講師に共有することで、講師は受講者の現場に寄り添ったプログラムを設計できるようになります。
研修タイトルだけを伝えてプログラム作成を依頼するのと、
顧客の声と背景を添えて依頼するのとでは、
出来上がる研修の質はまったく別のものになります。
講師の役割 ~届けられた声を「学びの体験」に変える~
一方、講師が担うのは、研修会社から届けられた顧客の声を、
受講者一人ひとりが「自分ごと」として受け取れる学びの体験に変換することです。
顧客の課題を理解した講師は、事例の選び方ひとつとっても変わってきます。
受講者の業界・職種に近い事例を用い、受講者が「あ、これは自分たちのことだ」と感じられる演習を設計する。
抽象的な理論を並べるのではなく、受講者が翌日から実践できる具体的な行動につなげる。
こうしたプログラム設計ができるのは、顧客の状況を深く理解しているからこそです。
そして研修当日、講師は受講者の反応を見ながら、伝え方やペースを柔軟に調整していきます。
事前に顧客の課題を把握しているからこそ、受講者の発言の中に課題の本質を見つけ、
そこを掘り下げることができる。
これが、受講者にとっての「刺さる瞬間」を生み出すのです。
研修会社と講師の「協創」が顧客満足を生む
こうして見ていくと、受講者の「受けて良かった」は、
研修会社と講師がそれぞれの専門性を発揮し、
連携してはじめて実現できることがわかります。
研修会社が顧客の声を丁寧にヒアリングして講師に届ける。
講師がその声をもとにプログラムを設計し、
研修会社と「このアプローチでいいか」「もっとこうしたほうが響くのでは」
と対話しながらブラッシュアップしていく。
この協創のプロセスを経た研修は、顧客の期待を超える成果を生むことが少なくありません。
そして、そうした成功体験を積み重ねていくことで、研修会社と講師の間にも深い信頼関係が育まれていきます。
難易度の高い案件が来たとき、
「この研修会社と一緒なら、必ず良いものが創れる」
と講師が思えるかどうか。
「この講師になら、安心してお客様を任せられる」
と研修会社が思えるかどうか。
この相互の信頼こそが、顧客に最高の研修体験を届ける原動力になるのです。
最後に ~すべては「受講者の笑顔」のために~
研修の主役は、常に受講者です。
企業が投資し、受講者が貴重な業務時間を割いて参加する研修。
その時間を「受けて良かった」と心から思えるものにすること。
これが、研修に関わるすべてのプロフェッショナルの使命ではないでしょうか。
そのために研修会社は顧客の声に真摯に耳を傾け、
講師は受講者の現場に寄り添い、
両者が力を合わせて最高の学びの場を創り上げていく。
「この研修を受けて良かった」「この研修を企画して良かった」。
この言葉を聞くために、私は今日も全力で研修に向き合っています。
