継続して営業組織力強化の支援を行っているクライアントの中で
成果を上げ続けることができる営業パーソン(優秀な営業パーソン)と
ちょっと残念だなと思える営業パーソンには結構大きな違いがあるように感じます。
同じ商品・サービスを扱い、同じ研修を受けて教育を受けているにも拘らず
なぜそのような違いが出てしまうのでしょうか?
それは、顧客からどのような期待を受けることができているかに
大きな違いがあります。
いわば営業パーソンのあり方を整えられているかが問われていると思います。
今回は、成果を上げ続けることができる営業パーソンのあり方について
考えていきたいと思います。
顧客は付き合うべき営業パーソンを見極めている
まずは顧客に対してアポイントを取るシーンを考えてみましょう。
アポイントを取る際には、
顧客に会うための目的と面談日時を伝えるかと思います。
そのアポイントに対して顧客は、
「A社の○○さんか、いつも当社の課題解決につながる良い話をしてくれる、会って話をした方が良いな」
「B社の○○さんか、いろいろと提案はしてくれるけど、当社のためというよりは、自分自身の成績のためのような気がする。会っても時間の無駄になるかな」
というように、営業パーソンからのアプローチに対して会う必要があるかどうかを
見極めています。
では、顧客はどこで見極めているのでしょうか?
A社とB社のどちらと付き合いたい?
では、以下のケースを少し考えてみてください。
あなたは商品企画担当です。販売に向けて新商品のパッケージを企画制作することになりました。そこで、これまで取引のあるパッケージ制作会社に声をかけました。A社とB社の営業パーソンがそれぞれ訪問してきて、以下のことをヒアリングして帰りました。
A社:商品のサイズ、パッケージの素材、使用する図表など、数量、納期、納品場所
B社:新商品の特徴、ターゲット顧客層とニーズ、販売方法、競合メーカー及び商品、
発売時期、流通経路
この段階で、商品企画担当のあなたはA社とB社それぞれに
どのようなことを期待するでしょうか?
恐らく
A社に対しては、
- 指示した通りの出来上がり
- 納品は期日通り
- 納品場所は指示通り
- 価格は安めかも
- スピーディーな対応
- 出来上がりはこれまでの踏襲、新たなアイディアはない
と感じるかもしれません。
一方でB社に対しては、
- 自社の新製品のコンセプトに合ったデザイン
- 顧客層が好むデザイン
- 何か新しい提案があるかも
- 一緒に販売戦略を検討してくれそう
- 出来上がりまでに時間がかかる
- 価格は高いかも
と感じるかもしれません。
この違いはどこで起きたのでしょうか?
その違いはヒアリングの内容です。
A社は、パッケージデザインに必要な情報をヒアリングをしています。
これは、自社にとって必要な情報を聞いていると言うことになります。
このヒアリングの結果、あなたは、A社に対しては無難な取引や価格勝負の
期待を抱くことになりました。
一方でB社は、新商品開発の背景情報をヒアリングをしています。
これは、お客様のビジネスに関する情報を聞いていることとになります。
このヒアリングの結果、ビジネスパートナーとして関わってもらえるとの
期待を抱くことになりました。
ここで押さえておきたいことは、
- 今回のケースでは、顧客はまだ提案を受けていない。提案を受ける前の段階(ヒアリング段階)ですでに各社に対する期待する内容が変わってきている。
- ヒアリング段階で顧客は自社にとって「役に立つ営業パーソン(ビジネスパートナー)」で有るかどうかを意識するかどうかは別として判断してしまっている。
- 自社にとって役に立つ営業パーソンには、いい提案をして欲しいと感じる。逆に役に立たないと感じると提案には期待しなくなる。
- もし提案機会を得られたとしても、価格交渉のための当て馬として使われることになる。
ということです。
自身の提案でどうにかなると考えるのではなく、何を聞くかですでに顧客の判断は終了してしまっていると理解しておく必要があります。
そして、聞く内容は自社の提案のための情報ではなく、顧客を深く理解するための質問(ビジネスを理解する質問)をする必要があると肝に銘じる必要があります。
顧客の期待のレベル
最後に、顧客が営業パーソンに期待するレベルがあるということを理解しておきましょう。
一番低い期待のレベルは、最低限の活動の期待です。
これは、いわば新人の営業パーソンに求められていることと同じレベルで、納品処理や何らかの伝言を正確に伝えることや手配などになります。
その次の期待のレベルは、無難な取引への期待です。
これは、商品・サービスの説明や見積もりなどの金額の提示などになります。値引き要請に応えることもこのレベルです。いわば基本的な取引関係を無難にこなすことを求められるレベルです。
その次の期待のレベルは、事業に貢献してもらえることへの期待です。
これは、商品・サービスのみではなく顧客に貢献できる付加価値を提供されることへの期待です。
一番高い期待のレベルは、ビジネスパートナーとしての期待になります。
これは、顧客のビジネスを加速するための問題となることは何かを顧客とともに考え、その問題を解決するためのソリューションを顧客とともに考え、生み出すことを期待されるレベルです。このレベルになると顧客は何か困ったことがあれば、たとえ自社の商品・サービスに関する領域以外でも「ちょっと話聞いてくれる?」と頼られる存在とみなされるようになります。
ここで認識しておくべきことは
最低限の活動の期待や無難な取引への期待のレベルでは、将来的に顧客から「あなたはいらない」と言われる可能性が高いということです。
ITが急速に発達してきている現在において、このレベルで行っていることはすべてインターネットの世界に置き換わることになります。実際のところネットであれば、動画などを活用して商品・サービスをどのように使うとビジネスに役に立つかを経験の浅い営業パーソンよりも分かりやすく説明することができます。また、24時間365日ネット上に公開されているため顧客が必要な時に、好きなタイミングで見ることができるので顧客の貴重な時間を無駄にすることもなくなります。そして、営業パーソンの人件費などがかかっていないためにその分低価格を提示することも可能となります。
そのため、営業パーソンは事業へ貢献してもらえることへの期待、ビジネスパートナーとしての期待を顧客から受ける必要があります。
これらのことから、営業パーソンはヒアリング段階でどれだけ顧客の期待値を上げられているかを意識する必要があります。そして、ヒアリングでは自社都合のヒアリングではなく顧客のビジネス理解を優先する必要があります。
自社都合から顧客理解へあたり前の話ですが、
まずは顧客理解を優先する営業パーソンのあり方を実践できるようになるところから
はじめる必要があります。